Chapter

『縁があったら』


大学へ入ってすぐの頃のお話。長い受験時代をようやく終えた僕たちは、刺激を求めていた。文字通り灰色の浪人生活から、夢にまで見た華やかな「キャンパスライフ(死語)」へと180度転換して、とにかく大学生活を楽しみたかった。

大学に入ってまずやってみたかったこと、それは「合コン」だった。現役で入った奴等が、浪人生達にいかにも楽しげに話してくれた合コン。 大人から見れば、集団見合いじゃないかと笑われるかもしれない。 でもそれは、大学の華やかさの象徴で、僕の頭の中では、「大学生、イコール合コンやり放題」という図式が完全に出来ていた。 ところが、残念なことにクラスのほとんどは地方出身者で、地元の京都や奈良などにコネのある奴は、数えるほどしかいない。 地元京都出身者は、学部のトップ合格者など、超真面目な奴らで、合コンの話をすれば軽蔑されそう。 しかし、長かった1年間の浪人生活は、僕に積極さを与えてくれた。その超真面目な竹中君(仮名)に、「合コンの話しとかないかな〜」とそれとなく(笑)話すと、何と意外にも「え〜特にどこでもいいんやったら、話あるでぇ〜」とのこと!ありがとう、竹中君!すかさずその話に乗ることにした。これが、僕の合コン初体験。 ちなみに、その後の四年間で、結局合コンは3〜4回しかせず、話と現実のギャップをいたく感じるのであったが、まだこの頃はそんな事知る由もなし。

僕の合コン初体験は、「11人対11人」(爆笑)。別の友人には、「それって同窓会やなぁ〜」と笑われた。何故こうなったのか? うちのクラスの奴等は、むっつりだった(笑)。誰一人積極的には話してこないくせに、異口同音に「人数足りないんだったら、僕も行くよ!」と言ってくれた。 その度に、優しい竹中君にお願いして、人数は何とか集まった。 竹中君の彼女の友人高橋さん(仮名)率いる、京都○○大学で音楽を専攻しているお嬢様達11人。僕らは、はっきり言って色めきたった。気合いが、入りまくった。そして当日を迎えた。(女の子達は、どうだったんだろう?)

合コンは、とっても楽しかった。阪急河原町の駅は、本当に同窓会のようだった。1次会はちょっとオシャレな居酒屋で、その後みんなで、がらがらに空いているディスコに行った。このディスコに行ったのは、後にも先にもこの時だけだったから、よっぽど人気の無いところだったんだろう。ディスコではクラスメートの一人が突然女の子を抱き上げて、女の子が悲鳴を上げて騒然となるハプニングはあったが、それはそれで、男女ともみんな喜んでいた。こうして盛り上がったところで、コンパはお開きになった。僕らは何人かずつグループになって女の子を送り届け、合コン初体験は大成功だった。クラスでは、女の子を突然抱き上げたその武骨な奴のネタで、しばらく盛り上がった。

さて、もちろん、そこから本当に大事なところが始まるのである。フォローである。1週間ほどして、竹中君に「合コンのフォロ〜どうする?」とネタを振ると、またまた優しい竹中君は「今度はもっと少人数でどっかいこか?」といって、2対2でのボーリングをセッティングしてくれた。男2のうち一人は彼女のいる竹中君であるから、これはおいしい。相手は、またまた高橋さんともう一人が来るそうだ。僕は、その一人にターゲットを絞る事にした。

当日、僕たちは4人でボーリングを楽しんだ。4人だと、さすがに和気あいあいである。もう一人の子は、コンパではあまり話していなかったが、そんなに悪い感じではない。ところがボーリングが終わると、その女の子は、用があるので帰る事になった。ピアノのレッスンかなにかで、持ってきた鞄には確かにその準備がしてある。彼女を皆でバス停まで見送って、残ったのは、竹中君と高橋さんと僕の3人。そのまま帰るにも早いので3人でお茶をする事にした。

3人でいると、もう高橋さんの独断場だった。「TARA君は、普段はどんな事してるの?」とか、「竹中君って彼女と凄く仲が良くって、本当にいいなぁ」とか、「○○市には、私の苗字は1軒しかないので、電話帳を見るとうちの電話番号はすぐ分かるの」とか、「うちのお姉ちゃんには彼氏がいるんで、良く電話がかかって来るんだけど、わたしは彼氏がいないの」とか、竹中君そっちのけで延々と僕に話をしてくるのだ。こうして時間が過ぎ、お茶会もお開きになった。バスで帰る竹中君を残して、僕が高橋さんを駅まで送っていく。京阪三条の駅まで送っていく間、僕たちは他愛も無い話をした。そして別れ際、彼女はありがとうの後に、にこっと微笑んでこう言った。

「じゃあ、縁があったらまた会いましょう。」

縁?! そうか、京都だからみんな雅(みやび)な言い方をするんだなぁと思って、僕は下宿に帰った。それで、僕の第1回合コンは完結した。高橋さんには、3ヶ月ほど経って偶然1度電車の中であったのだが、話し掛ける彼女に生返事を2つ3つして、次の乗換駅で、僕は電車を降りた。運悪く、その日は最悪にみっともない格好をしていたので、知り合いには会いたくなかったのだ。

今ここまで書いてみて、思う。ひょっとして、高橋さんは何かを僕に伝えたかったのでは?僕は、大馬鹿者だったのではなかろうか?せめて、一度くらいデートに誘ってみる価値はあったのでは?僕の苦渋と挫折の大学生活が始まるのはまさにこの後なのだが、その時にはなぜか何とも思わず、「次行こ!」だったのだ。

あの時の彼女に、一度会って聞いてみたい気がする。「すみませ〜ん、僕ってにぶかったんですか?」って。 もったいないことした。


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